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知人からご紹介いただいたのは今からちょうど一年前、本格的に寒くなる少し前のことです。「知り合いの旅館の蔵書を整理してほしい」そんなお話でした。
「すごい」とは聞いていたものの、実際に訪れてみると想像をはるかに超える本の数で、どこからどう手をつければいいものか。しかも、今までに見たことも触れたこともない本ばかりでした。 その旅館は創業500年の歴史をほこる伊香保の千明仁泉亭。 500年といわれてもなかなかピンときません。 ただ、本とともに眠っていた古道具や民具、掛け軸などから、その積み重ねられた時間を少し覗くことができたような気がします。 千明仁泉亭にあってほしい本 この先ずっと残しておきたい本 訪れたお客様に閲覧していただきたい本 何万冊の本をより分けて汚れを落とし、補修を施してグラシン紙を巻く。黙々と本に触れるのは、いつもとても楽しい時間です。 半年をかけてようやく数百冊が旅館の蔵書となりました。 若女将の話によれば、先代、先先代が特に本がお好きだったようで、その時代に買い求めた本がほとんどだとか。趣味の狩猟や煙草の本、日本と海外の文化・風習にまつわる本、なかでも多かったのは温泉や旅の本で、表紙からユニークで心躍りました 千明仁泉亭は明治の文人徳冨蘆花の常宿だったこともあって、稀少な著書もたくさん出てきました。代表作『不如帰』には千明仁泉亭の描写があるほど愛されていました。 まだ少し先のことになりそうですが、千明仁泉亭を訪れたとき、その圧巻の蔵書を眺められる日が来るはずです。 本に紛れていた先代のコラージュ写真。おそらく海外の雑誌を切り抜いて作成したものです。本物の格好よさを見ました。
by suiran-books
| 2016-11-08 22:00
| 本と記憶の記録
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