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毎年12月に知人と「今年の一冊」を紹介しあう。今年出会った本の中で一番心に残ったもの。私の2014年の一冊は、松家仁之さんが書いた『火山のふもとで』。 浅間山のふもと、北軽井沢周辺をモデルにした、ある建築事務所を巡る物語。私の父の実家が近いこと、お気に入りのカフェがあることから、この地域はなんとなくなじみ深い。また、登場する建築まわりの事物が現実とリンクしているように思える。群馬音楽センターを設計したチェコ出身の建築家アントニン・レーモンドを師事し、名作と呼ばれる別荘“軽井沢の山荘”を建てた吉村順三。その関係性がそのまま物語の中に生きているような気がするのだ。建築好きとしてはうれしくて、当時をのぞき見るようで興奮した。 いつ訪れても感じる、ひんやりした空気まで含むような細かな描写によって、物語の舞台が頭の中にできあがっていく。標高が高く、ふもとの地域よりも早く感じる季節の循環。やさしい緑から力強い緑へ満たされていく春夏。さまざまに彩られる美しい秋。そして、雪で閉ざされる長く寒い冬。それらはよく知る北軽井沢の景色そのものだ。 今年は本をあまり読めなかったが、読んだ本はどれも心に残る良い読書ができた。2015年の本との出会いが楽しみだ。
by suiran-books
| 2014-12-22 10:29
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